21日の民生常任委員会では、市民局から「西宮市男女共同参画プラン(素案)のパブリックコメントの結果について」と、産業文化局から「西宮中央運動公園及び中央体育館・陸上競技場等再整備基本計画(案)の策定について」の所管事務報告がありました。
一つ目の「西宮市男女共同参画プラン」の改訂にあたってのパブコメの結果に対する市民局の「考え方」についての報告では、納得いかない点が多く、いつになく少し長めの質問&意見となりました。
今回の「プラン」(素案)に対する意見は、このところの他の「計画」などへのパブコメの市民の意見と異なり比較的多い人数であり、しかも、男女共同参画の趣旨をよく理解していらっしゃる方からの意見が多い印象でした。
そのよく理解している市民の意見の数々に対して、はぐらかすような、正面から答えない市の「考え方」には失望感さえ感じました。
【「性別にとらわれることなく…」?】
特に、たとえば、
「プラン策定の趣旨」として「性別にとらわれることなく、誰もが参画できる社会の実現に向けて」という文章について、あるいは「誰もが性別にとらわれることなく」という表現について、意見が二つあったのですが、つまりは、性的マイノリティへの配慮が欠けているのでは、という意味での意見です。
それに対して、回答は「素案に記載済み」として、お二人の意見を却下しています。
しかし、私もこの文言を改めて調べてみると、国の第4次男女共同参画基本計画では「基本的な方針」の中に「女性も男性も全ての個人が、互いにその人権を尊重し、喜びも責任も分かち合いつつ、性別に関わりなく、その個性と能力を十分に発揮できる男女共同参画社会の実現」とあります。
つまり国の表現は「性別にこだわることなく」ではなく「性別に関わりなく、その個性と能力を十分に発揮できる男女共同参画社会」という表現です。
それが「性別にとらわれることなく」では、二人の市民のご意見のように、ちゃんと伝わらないし、なによりも、性的マイノリティの人たちを傷つける可能性さえあるのではないかと考えられます。
【DV・性暴力の根絶が、「DV対策基本計画」!?】
次に、もっと、大きな問題ですが…。
重点施策として「DV・性暴力の根絶」としたうえで、「DV対策基本計画」というタイトルを安直に付してしまっている点です。
現行のプランでは、別建てで丁寧な「DV対策基本計画」が35頁にわたってあるのに、その形式を無くして、コンパクトにした点への批判をかわすためか、あわててこの項目の5頁ほどの内容に「DV対策基本計画」とタイトルだけ付け足しているのです。
内容が少なくコンパクトにしているのに、DV対策、性暴力の根絶という大きな問題を一つの重点施策に押し込めて、それを「DV対策基本計画」とするのは、市民へのごまかしとしか思えません。
そして、ごまかされない市民からはその点の指摘もパブコメで届いていたにもかかわらず、「このままいく」ということのようです。
なによりも、「DV対策基本計画」はその根拠法は無論、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」(略して、DV防止法)です。
しかし、性暴力は、その概念として、もっと広い意味が含まれており、その刑事罰は、刑法を根拠とするものもあり、さまざまな対応が求められる大きな社会の問題です。そもそも、一緒くたにすることに無理があります。
【DV防止法に「性暴力」の文言はない…】
私の質問の「DV防止法に『性暴力』という文言はあるのか?」という問いに対して、市民局は答えられませんでした。
何が、言いたかったのかというと、別物を一緒くたにするな、とうことです。
そして、DV防止法には、「性暴力」という言葉、文言はどの条文にもありません。
ドメスティック・バイオレンスには、性暴力もあるかもしれませんが、言葉の暴力も、単なる鉄拳だけの暴力もあり、性暴力を並列にすることに問題があります。
実際に、性暴力という言葉は、その支援NPOなどの言葉の説明では、いわゆるレイプや、強制わいせつなど、全く見ず知らずの人や、知人であっても、親しい関係でない人から多く発生する犯罪を指すことが多いです。つまり、ドメスティックな関係でない人からの暴力なのに、なぜ、「DV対策基本計画」と、安直にしてしまえるのか。
たとえば、これらの問題に詳しい人がこの素案を見た場合、笑われてしまうのではないか、とさえ感じます。
【条例がないのにプランがコンパクト化でいいのか】
最後に、一番大きな問題…。
この素案の頁の少なさは、勢い内容の項目の少なさを物語っているのですが、このような形の「男女共同参画プラン」は他市、とりわけ中核市には全く見られないものです。
しかも、近畿一円の中核市では、ほとんどの中核市(一番、あたらしい明石市は未制定)で、つまり西宮市以外、どの中核市も男女共同参画推進条例(名称は、異なっても、目的・趣旨は同じもの)を制定しています。
そして、条例に基づいて「基本計画」あるいは「プラン」を策定しているのです。
西宮市の場合は、1999年の男女共同参画基本法の制定以後の事情がどのようなものだったのか、定かではありませんが、それでも、内容の濃い「プラン」があったので、条例がなくても、施策や事業に影響はないと考えていました。
ところが、今回のような頁のスカスカなものだと、非常に心もとないし、ここに書かれていないことをどのように進めるのか、大いに疑問です。
つまりは、しないことの言い訳に「プランに書いてないからしない」ってこれからの市政を担う人(市長や局長ですが…)に言われかねません。
条例がなければ、それも、まかり通ってしまいかねません。
条例もなく、プランもこんなに薄い…では、非常に問題は残ります。
まだ、決定ではないはずなので、今からでも、関係職員の皆さんの踏ん張りに期待するしかありません。
【男女共同参画プランの趣旨とその必要性…】
「女性活躍法」が2015年に成立し、一昨年は、性暴力に関係する部分で110年ぶりに刑法が改正されました。また、昨年は、政治分野における男女共同参画推進法もできました。
一方、この1年をみただけでも、閣僚、高級官僚の「セクハラ」事件や、セクハラ発言。自民党女性議員のLGBT差別ヘイト寄稿とその後の開き直り。全国各医学部における差別入試の発覚。『週刊SPA!』問題などなど、事件や社会問題が噴出しています。
法律が整えられる一方、社会の意識が旧態依然である点も明らかになっているわけです。
そういう意味でも、このプランの改訂が必要だったのだ、という、ますます必要性が高まっている、というそんな趣旨の記述も必要だったと思いますが、それらは、ほとんど触れられていません。
また、男女格差を表すジェンダーギャップ指数で世界149カ国中、110位という不名誉なランキングに相変わらず甘んじている日本の社会が、なぜ、そんなところで低迷しているのかその内実を解説して、このような社会の男女格差を解消していく事が、まさに「男女共同参画社会である」、と触れることも必要でしょう。
それも、この「素案」では、全く書かれていませんでした。
この素案のまま4月に改訂された?「プラン」となるなら、あまりにもお粗末としか言いようがありません。